| 十奥野の低地ドイツ語講座 Plattdüütschkurs |
ドイツのド真ん中でわたしがハンブルク出身の友人ラインハルトや
低地ドイツ語の権威ゲッティンゲン大学のシュテルマッハー教授から学んだ低地ドイツ語を
インターネット上でみなさんにお教えしようと、低地ドイツ語講座を開講してみました。
ドイツ語を勉強したことのある方なら、比較的簡単に習得できるでしょう。
(低地ドイツ語のヒアリングはラジオ・ブレーメンのホームページ: http://www.radiobremen.de/online/platt/ を参考にするとよいでしょう。
RealPlayer で低地ドイツ語のニュースを聞くことができます。)
第5回 Hest du Familie? (家族はいるの?) 低地ドイツ語: Anke: Hest du Familie? Klaas: Ja, ik heff mine Fru un twee Kinners, een Söhn un 'ne Dochter Anke: Wat maakt dine Fru? Klaas: Se un ik, wi beiden sünd Lehrer. De Kinners gahn in de School. ドイツ語訳: Anke: Hast du Familie? Klaas: Ja, Ich habe meine Frau und zwei Kinder, einen Sohn und eine Tocher. Anke: Was macht deine Frau? Klaas: Sie und ich, wir beiden sind Lehrer. Die Kinder gehen in die Schule. 日本語訳: アンケ: 家族はいるの? クラース: うん。僕には女房と2人の子供がいるよ。息子と娘さ。 アンケ: 奥さんはなにをしているの? クラース: 女房と僕、僕たち二人ともは教師なんだ。子供たちは学校に通っているよ。 解説とポイント: 1) ドイツ語の動詞 haben: 「〜を持っている」は低地ドイツ語で hebben です。 一人称単数では ik heff...: 私は〜を持っている 二人称単数では du hest...: あなたは〜を持っている と活用します。 2) 人称代名詞三人称単数女性「彼女(ドイツ語の sie)」は低地ドイツ語で se (ゼイ)、 また一人称複数「私たち (wir)」は wi (ヴィ)といいます。 3) 前回解説した sien (ドイツ語の sein 「〜である」)は 一人称複数で wi sünd... 私たちは〜である と活用します。 4) Kind (子供)の複数形は、ドイツ語と同じで語尾に -er をつけますが、さらに -s をつけて、 二重に複数形にすることが低地ドイツ語ではあります。 (すでに -er で複数形であることは分かっていますので、Kinner でも構いません。) また d が n に変化して Kinners となります。 5) ドイツ語の数2: zwei は低地ドイツ語で twee (トゥヴェーと発音)になります。 数については改めて解説しましょう。 補足: hebben の一人称単数形 ik heff... は地域差や話す人によって、 ik hebb... となる場合がありますので、ご注意ください。 (2005年8月12日) |
第4回 Wat maakst du? (君は何をしてるんだい?) 低地ドイツ語: Klaas: Anke, wat maakst du? (アンケ・ヴット・マークスト・ドゥ) Anke: Ik bün Studentin. (イック・ビュン・シュトゥデンティン) Klaas: Ach, du büst studentin! (アッハ・ドゥ・ビュスト・シュトゥデンティン) Anke: Ik studeer Düütsch un Englsch. (イック・ストゥデーァ・ドューチュ・ウン・エングルシュ) ドイツ語訳: Klaas: Anke, Was machst du? (アンケ・ヴァス・マッハスト・ドゥ) Anke: Ich bin Studentin. (イッヒ・ビン・シュトゥデンティン) Klaas: Ach, du bist Studentin! (アッハ、ドゥ・ビスト・シュトゥデンティン) Anke: Ich studiere Deutsch und Englisch. (ダス・イスト・シューン) 日本語訳: クラース: アンケ、君は何をしてるんだい? アンケ: 私は学生よ。 クラース: あぁ、君は学生なのか。 アンケ: 私はドイツ語と英語を勉強しているの。 解説とポイント: 1) ドイツ語の sein 動詞(英語の be 動詞に相当: 「〜である」)にあたる低地ドイツ語の動詞の 活用をまとめてみましょう。 不定形は sien (ズィーンと発音)です。 一人称単数では ik bün...: 私は〜である 二人称単数では du büst...: あなたは〜である 三人称単数では he(se, dat) is...: 彼(彼女、それ)は〜である と活用します。複数については改めて解説いたします。 2) 動詞「〜する」はドイツ語で machen ですが、低地ドイツ語では maken 。 既出の「第2次音韻推移(グリムの法則)」で子音の ch が k に変化していますね。 二人称の人称変化では aa と母音を二重にして maakst となります。 (2005年5月13日) |
第3回 Wo geit dat? (調子はどうだい?) 低地ドイツ語: Klaas: Anke, wo geit di dat? (アンケ・ヴォー・ガイト・ディ・ダット) Anke: Danke, mi geit dat gaut. Un du? (ダンケ・ミ・ガイト・ダット・ガウト・ウン・ドゥ) Klaas: Mi geit dat ok banig gaut! (ミ・ガイト・ダット・オーク・バニヒ・ガウト) Anke: Dat is moi! (ダット・イス・モーイ) ドイツ語訳: Klaas: Anke, Wie geht es dir? (アンケ・ヴィー・ゲート・エス・ディーア) Anke: Danke, mir geht es gut. Und dir? (ダンケ・ミーア・ゲート・エス・グート・ウント・ディーア) Klaas: Mir geht es auch sehr gut! (ミーア・ゲート・エス・アォホ・ゼーア・グート) Anke: Das ist schön! (ダス・イスト・シューン) 日本語訳: クラース: アンケ、調子はどうだい? アンケ: ありがとう。私は元気よ。あなたは? クラース: 僕もすごく元気だよ! アンケ: それはいいことね! 解説とポイント: 1) 前回の挨拶に続き、「お元気ですか?」や「ご機嫌いかが?」、「調子はどう?」の質問は wo geit di dat? です。 これはドイツ語の wie geht es dir? を低地ドイツ語に訳したものです。 ドイツ語の疑問詞 wie: 「どのように?」は不思議なことに低地ドイツで wo 。 ドイツ語の wo: 「何処で?」と混同しないように注意しましょう。 (ただしハンブルク地方の低地ドイツ語ではドイツ語と同じで、wie を使い、 wie geit di dat? となるそうです。 wo geit? の表現はヴェストファーレンやオストフリースラントの低地ドイツ語で 使われる傾向が強いようです。 相手の低地ドイツ語話者の出身地によって使い分けてください。) ドイツ語の自動詞 gehen: 「行く、経過する」の三人称単数現在形 geht は、 低地ドイツ語では geit 活用し、不定形は gahn, または gohn となります。 ドイツ語の長母音 eh が低地ドイツ語では ei 二重母音になります。 ニ人称の人称代名詞単数 du は、ドイツ語の3格では dir と格変化しますが、 低地ドイツ語では3・4格ともに di となります。 同様に一人称単数 ik も3・4格では、mi と活用します。 低地ドイツ語は、英語やオランダ語、北欧語と同じく、3・4格の区別がありません! (英文法での目的格と言うのが、適当かもしれませんね。) 2) 「お元気ですか?」の質問に対し、Mi geit dat gaut. と答えますが、 これもドイツ語の Mir geht es gut. をそのまま低地ドイツ語に訳した表現です。 ドイツ語の形容詞 gut: 「よい」は、低地ドイツ語で gaut となって、 長母音 u が二重母音 au に変化します。 3) ドイツ語の副詞 auch: 「〜も」は、低地ドイツ語では ok となります。 これはドイツ語の二重母音 au が単一の長母音 o に変化し、 子音の ch が k に変化するのは、「第2次音韻推移(グリムの法則)」ですね。 4) ドイツ語とはまったく異なる低地ドイツ語独特の表現が副詞の banig と形容詞 moi です。 banig はドイツ語の副詞 sehr: 「とても」に相当します。 moi はドイツ語の形容詞 schön: 「美しい、すばらしい」にあたります。 蛇足: ちなみに moi はオランダ語で mooi と書かれます。 また、挨拶の言葉 moin も同じ語源に由来すると言われています。 いずれもフリージア語から発したものだそうです。 フリージア語はフリースラント地方の低地ドイツ語と分類されがちですが、 本来は英語やオランダ語に近い、ドイツ語からは独立した一つの言語として扱われます。 (2004年11月18日) 補足: 1) ドイツ語の wie geht es dir? に対し、低地ドイツでは wo geit di dat? となり、 3格の人称代名詞と主語となる3人称単数中性の代名詞「それ」の語順が逆になります。 これは低地ドイツ語では語呂や響きがよく、また、この語順の方が発音しやすいためです。 (2004年11月23日) 2) ハンブルク出身の友人ラインハルトの話では、as geit di dat? という地域もあるそうです。 ドイツ語の wie には、疑問詞の用法と接続詞の用法がありますが、 低地ドイツには、接続詞の as があります(「アス」と発音します)。 これは英語の接続詞 as に相当しますね。 地域によっては as がドイツ語の疑問詞 wie のように使われているのですね。 ドイツ語も英語もゲルマン語族です。そしてドイツ語と英語の中間に位置するのが低地ドイツ語。 低地ドイツ語のそれぞれ地域で wo, wie, as が混在しており、 ゲルマン語の妙といえるのではないでしょうか。 (2005年1月2日) |
第2回 Moin moin! (やぁ!) 低地ドイツ語: A: Moin moin! Ik bün Klaas. Un du? (モイン・モイン・イック・ビュン・クラース・ウン・ドゥ) B: Moin, Ik bün Anke. (モイン・イック・ビュン・アンケ) ドイツ語訳: A: Hallo, ich bin Klaas. Und du? (ハロー・イッヒ・ビン・クラース・ウント・ドゥ) B: Hallo, ich bin Anke. (ハロー・イッヒ・ビン・アンケ) 日本語訳: A: やぁ、僕はクラース。君は? B: こんにちは、私はアンケ。 解説とポイント: 1) あいさつの言葉 Moin は低地ドイツ語独特のものです。 地域や話す人によって Moin moin と2回言うこともあります。 シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州ではこの傾向が強いようです。 朝・昼・晩、いつでも使える便利な単語ですね。 2) 低地ドイツ語の人称代名詞一人称 ik: 「私、僕」は、 ドイツ語の ich の ch が k に変化します。 これも「第2次音韻推移」あるいは「グリムの法則」の一つです。 3) ドイツ語の動詞 sein: 「〜である」の一人称単数現在 bin が、 低地ドイツ語では軟口蓋化(ウムラウト)されて bün となります。 4) ドイツ語の副詞 und: 「そして」は d が脱落して un となります。 低地ドイツ語では d がとかく脱落する傾向にあります。 蛇足: 1) 男性の名前 Klaas はドイツ語の Klaus (クラウス)の低地ドイツ語形。 ドイツ語の au の二重母音が、低地ドイツ語では aa と母音を2つ重ねて長母音化されます。 2) 女性の名前 Anke はドイツ語の Änchen の低地ドイツ語形。 k が ch になるのは、前述の「第2次音韻推移」あるいは「グリムの法則」ですね。 ちなみに、Danke, Anke! と韻を踏んで、ダジャレにされることもしばしばあります。 (2004年10月21日) 補足: 1) 低地ドイツ語は正書法がなく確定したスペルがありませんので、人によっては、 ik を ick と書くこともあります。 また地域によっては、 bün もドイツ語と同じく bin となります。 (2004年10月24日) 2) ちなみに、低地ドイツ語の ik bün ... の構文は、オランダ語では ik ben ... ですね。 (2004年10月29日) |
第1回 Wat is dat? (これは何ですか?) 低地ドイツ語: A: Wat is dat? (ヴァット・イス・ダット) B: Dat is een Appel. (ダット・イス・エーン・アッペル) ドイツ語訳: A: Was ist das? (ヴァス・イスト・ダス) B: Das ist ein Apfel. (ダス・イスト・アイン・アプフェル) 日本語訳: A: これは何ですか? B: これは1個のリンゴです。 解説とポイント: 1) ドイツ語の疑問詞 was: 「何?」は低地ドイツ語で wat になり、 同じように、指示代名詞 das: 「これ」は dat となります。 ドイツ語の s が低地ドイツ語では t になります。 また、ドイツ語の男性名詞 Apfel: 「りんご」が低地ドイツ語では Appel になります。 ドイツ語の s が低地ドイツ語では t に、pf が pp (p) 変化する法則性があります。 これは専門用語でいう「第2次音韻推移」、あるい「グリムの法則」(グリム兄弟のお 兄さんが発見した法則なので、こう呼ばれます)といいます。 2) ドイツ語の不定冠詞(男性単数) ein は低地ドイツ語で een と変化し、 二重母音は、母音 e を二つ重ねて長母音に変化します。 3) 英語のbe動詞の三人称単数現在形 is は低地ドイツ語でも is 。 ただし、”イズ”ではなく、”イス”と発音しましょう。 英語も低地ドイツ語も is はドイツ語の ist から t が脱落した形ですね。 蛇足: 低地ドイツ語の wat に h を加えると、英語の what に、 dat の d を th にすると、英語の that になりますよね。 低地ドイツって案外簡単? 参考文献: Gerold Meiners 著 Plattdüütsch in sess Weken (2004年10月14日) |
質問等は t_hosomichi@yahoo.co.jp へ