お食事処

其の拾弐 ラインハルト風グリュンコール・ミット・ピンケル (Grünkohl mit Pinkel à la Reinhard)


 

今回のお食事処はドイツのど真ん中や北ドイツの冬の味覚を取り上げてみましょう。

ドイツの食べ物といえば、皆さんはソーセージやアイスバインといったたっぷりとした肉料理を想像されることでしょう。

今回皆さんへ供される「グリュンコール・ミット・ピンケル (Grünkohl mit Pinkel) 」 は、そんなドイツ料理のイメージを裏切る、

お肉はあくまで脇役の滋味溢れるメニューです。

そのレシピを友人の、自称グルメのラインハルトに教えてもらいました。

ラインハルトによれば、冬の北ドイツはグリュンコール (Grünkohl) の季節なのだそうです。

グリュンコール、日本語に訳するならば、緑菜となるのでしょうが、おそらくこの野菜は日本には存在しないのではないでしょうか。

東北の田舎出身のわたしも日本ではとんとお目にかかったことがありません。

辞書を引いてみれば、グリュンコールは緑葉カンランキャベツというのだそうです。

この我々にとって未知のグリュンコール、北ドイツやニーダーザクセン、ウェストファリア地方ではよく知られているのだそうですが、

それ以外の地方のドイツでは案外知られていないようです。

テューリンゲン地方ではグリュンコールを馬の餌にしているというのをラインハルトは知り合いのその地方の農家の人に聞き、

「なんて勿体ない、あんな美味いものはないよ!」と話したら、次に会った時山ほどグリュンコールをもらったそうです。

当のグリュンコール、この季節スーパーの食品売り場で缶詰めを買い求めることができます。

さて、ラインハルトに教えてもらったレシピで冬の北ドイツ料理を作ってみましょう。

用意する食材は、グリュンコールの缶詰め、塊りのベーコン (Bauchspeck) 、玉ねぎ、にんにく、ガチョウの脂肪(なければオリ−ブオイルでも可)、

メットエンデン (Mettenden) というウェストファリア地方の粗挽きのスモークしたソーセージ(今回はメットエンデンを使いましたが、

ブレーゲンヴルスト (Bregenwurst) という豚の脳みそ入りソーセージもよく使われます)、

ところで、この料理に使われるソーセージを通称ピンケル (Pinkel) といいますが、ピンケルとはドイツ語でおしっこという意味で、

はて、ソーセージを男性のペニスに見立ててそう呼んだのだろうかとラインハルトと二人で首を傾げていました。

しかしどうやら、低地ドイツ語の指という単語 Pink に由来しているようです。

決してソーセージをペニスに見立てたのではなく、あくまで指だったのです。

そして味付けにコンソメ、ウイキョウ、甜菜のシロップ(蜂蜜でも可)、塩と胡椒。

付け合せには、マッシュポテトか塩茹でのジャガイモ。

あらかじめ付け合せを作っておきましょう。

マッシュポテトは、茹で上がったジャガイモを牛乳とバターと一緒につぶし、よくかき混ぜ、好みで塩と胡椒で味付けをしましょう。

 

本題のグリュンコールですが、ベーコンを幅1センチほどの薄切り、玉ねぎとにんにくをみじん切りにします。

深底の鍋を熱し、ガチョウの脂でベーコンをカリカリになるまで炒めます。

そこへみじん切りにした玉ねぎを入れて2〜3分火を通します。

火を弱火にして、缶詰めのグリュンコールを缶の中の液体ごと鍋にドバッと入れてかき混ぜます。

ラインハルト曰く、グリュンコールはビタミンCを豊富に含んだ野菜なので、ビタミンCを壊さないように弱火でコトコト調理すべし。

グリュ−ンコールの空き缶に100ccほどの湯とコンソメを溶かし、それを鍋へ入れます。

空き缶を使うのは、缶にグリュンコールの味が残っていて、それを無駄にすることはあるまいと彼が言っていたからです。

それから塩、ウイキョウ、粗挽きのメットエンデン・ソーセージを加えて、弱火で約30分コトコト煮ます。

20分後にみじん切りのにんにく、胡椒、大さじ1杯の甜菜のシロップ、ガチョウの脂を少々を鍋に入れ、味をととのえていきます。

そして10分そのまま弱火で煮ましょう。

火を止めて深めのお皿を用意し、まずマッシュポテトを盛り付け、煮込んだソーセージとグリュンコールを盛りましょう。

お皿の端っこにマスタード (Senf) をのせます。

 

関心の味ですが、日本では見たこともないグリュンコールは、わたしたち日本人にもどこか懐かしい滋味に満ちた優しい味がします。

北ドイツの田舎料理、おふくろの味ともわたしは評したくなりました。

ソーセージ「ピンケル」もよく煮込まれグリュンコールの味が沁み込んでいます。これをマスタードでいただきましょう。

このメニューは必ずビールで頂くのが鉄則。絶対にワインとともに食べることはないのだそうです。

冬場に北ドイツを旅行される方はドイツ料理のレストランでこのグリュンコール・ミット・ピンケルを是非お試しください。

また偶然お祭りの屋台で見かけることもあるでしょう。

きっと旅の疲れを癒してくれる、ホッとするひとときをグリュンコールが与えてくれることでしょう。

参考文献:

Heinrich Stern 著 Köstliches aus der niedersächsischen Küchen

Institut für niederdeutsche Sprache 編纂 Plattdeutsch-Hochdeutsches Wörterbuch

 

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