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お食事処

其の拾壱 クリスマスビール (Juleøl)


  

寒い季節になると、日本でも冬季限定醸造と呼ばれるビールが出回ります。

普通のビールより少しアルコールの度数が高めに醸造されていて、飲むと体が温かくなり、いつもより酔いが早く回ってきます。

寒い冬には寒いなりのビールがあります。

ドイツのお隣りの国デンマークにも実はそのようなビールがあり、わたしの大好きなビールのひとつでもあります。

日本の冬季限定醸造ビールとは多少異なりますが、デンマーク語でユーレウル (Juleøl)

クリスマスの時期限定のビール、手っ取り早くいえば、クリスマスビールですね。

わたしはこの時期いつもこのクリスマスビールを飲むためにドイツからデンマークへ出かけ、両手に抱えきれないほどのビール買ってきます。

今年も先日クリスマスビールの買出しにデンマークへ出かけました。

この日は11月8日の金曜日、”J-day”。

デンマークの大手の醸造所ツボルグ社 (Tuborg A/S) の今年のクリスマスビールが花金の20時59分をもって解禁となりました。

北国のボージョレー・ヌーヴォーといった趣きでしょうか。

とっぷりと日の暮れたコペンハーゲンの目抜き通りストロイエ (Strøget) にツボルグ社のトラックがやって来て、

荷台から鮮やかな青い衣装を身にまとったニセ (Nisse: デンマークでは、サンタクロースは「ニセ」という妖精です) たちが現れ、

クリスマスの歌をうたって、町ゆく人たちに今年最初のクリスマスビールを景気よく振舞います。

 

この日はただでビールが飲めるとあって、トラックの回りにはコペンハーゲンっ子たちの人だかり。

またストロイエのパブでも今年のクリスマスビールの解禁を祝って長い行列でできていました。

それでは、デンマークの冬のビールを味わってみましょう。

 

アルコール度数は日本の冬季限定醸造ビールと同じく高めに醸造してあり、5.6パーセント前後。

色はピルスナータイプの金色とはちがって、赤、もしくは濃い琥珀色をしています。

この琥珀色がロマンティックでクリスマスの雰囲気にぴったりなのではないでしょうか。

わたしはこのクリスマスビールを「デンマークの冬の宝石」と呼んでいます。

さて肝心の味ですが、苦味はほとんどなく、ほんのりとした甘ささえあります。

ビールとは苦味を味わうものですが、甘いビールも世界にはあるのです。

その秘密は、ツボルク社のものですと甘草のエキス、他の醸造所ですとブドウ糖のシロップなどで味付けをしているからなのです。

何事にも厳格といわれるドイツには「ビール純粋令」という、ビールは水と麦芽(モルト)とホップで作るべしという掟があり、

現在もその掟に則ってビールが作られています。

ドイツ人に言わせれば、デンマークのクリスマスビールはビールではないと言うにちがいありません。

しかし所かわれば、またちがったビールの楽しみ方もあります。

こんなビールの楽しみ方があってもいいでしょう。

(そんなドイツでもここ数年いくつかの醸造所が、デンマークのまねをしてか、クリスマスビールを発売するようになりました。

色はデンマークの同じく琥珀色をしていますが、当然ドイツビールの誇り、ビール純粋令に厳格に守っての醸造ではありますが。)

北国の人たちは長く暗い冬の夜を琥珀色のビールとともに過ごしています。

仲のいい友だち、恋人、パートナーとグラスを傾けるとき彼らはこう言います:

「スコール (Skål: デンマーク語で「乾杯」)!」

(2002年11月24日)

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